前回は、「住宅ローン」の支払いに困ったら誰に相談すべきなのかを説明しました。今回は、住宅ローン問題を「弁護士」に相談するときの留意点を見ていきます。

手数料欲しさに「管財事件」にしたがる弁護士も

かつて弁護士は資格を持っているだけで高収入が保証される職業でした。ところが司法改革により大量の弁護士が誕生したことから、近年では収入がどんどん減少しており、なりふり構わず収益をあげようとする人も増えています。

 

住宅ローンの返済に行き詰まった人から相談を受けた弁護士はほとんどの場合、自己破産をすすめます。債務者のニーズをくみとって、自己破産しないで解決できるという選択肢もあることを教えてくれる弁護士は、残念ながら稀少です。

 

自己破産をすすめる中でも、弁護士が特にやりたがるのが「管財事件」です。自己破産には「管財事件」と「同時廃止事件」がありますが、弁護士にとっては前者のほうがはるかに高い手数料を受け取ることができるためです。

 

「管財事件」にするためには、自己破産する時点で、自宅という大きな財産を持っていなければなりません。自己破産前に任意売却をしたほうが、ほとんどの債務者にとってお得なのですが、そうすると「同時廃止事件」となり、弁護士にとってはうま味がなくなってしまいます。

 

「任意売却は面倒が大きく、利益にならないのでやりたくない」というのが多くの弁護士の本音です。任意売却にすると、弁護士は裁判所から「適正な価格での売却だったか」を問われます。売却価格の妥当性を証明するためには、不動産の査定書や固定資産税評価額を示す書類などを作成して提出する必要があり、手間がかかります。

要望に合う解決策を掲示してくれるか、見極めが重要に

加えて、「任意売却にトライして失敗したら、裁判所からの評価が下がる」というプレッシャーも弁護士にはあります。

 

裁判所は仕事の成績により弁護士を独自に格付けしており、格付けの高い弁護士には企業の「管財事件」など、大きな報酬が見込める案件を回します。個人の任意売却で失敗し、格付けが下がることは収入に大きな悪影響となるので、「リスクを冒してでも債務者のために」と頑張る弁護士はいないのです。

 

「どうせ自己破産するなら同じ」という考えで、競売にしてしまうのがほとんどの弁護士のやり方です。「管財事件→競売」という流れしか知らない弁護士も多く、適切な任意売却にすれば、債務者がどれだけ助かるかという発想はそもそも彼らの頭にありません。特に、古くから開業している年配の弁護士に多く見受けられます。

 

固定客をまだあまり持っていない若い弁護士の中には、「よい口コミを広めて、顧客を集めたい」という考えから、面倒な手続きを厭わず頑張る人もいます。

 

弁護士に相談する際には「熱意を感じられるか」「自己破産ありきだけでなく、要望に合う解決策を提示してくれるか」ということに着目して信頼性を計ることが大切です。

本連載は、2017年2月13日刊行の書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

住宅ローンが払えなくなったら読む本

住宅ローンが払えなくなったら読む本

著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

夢のマイホームを購入する際、多くの人が利用する住宅ローン。ローンを組む際は、通常、専門家のアドバイスを受けながら無理のない返済計画を立てますが、長い返済期間では何が起こるかわかりません。思わぬトラブルによって返…

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