企業における「価値創造のプロセス」と各部門の連動

今回は、企業における「価値創造のプロセス」と各部門の連動について見ていきます。※本連載では、株式会社バリュークリエイト代表取締役・三冨正博氏の著書『「見えない資産」経営 企業価値と利益の源泉』(東方通信社)から一部を抜粋し、組織資産や人的資産、顧客資産といった「見えない」資産の創り方を見ていきます。

企業が突き当たっている「問題の原因」とは?

価値創造のプロセスは、バリューダイナミクスの物的資産と顧客資産の位置を入れ替えただけといえばそうだが、この最初の一歩はきわめて革新的だった。5つの資産は、それぞれが独立してアウトプットを行っているわけではなく、組織資産を中心に他の4つの資産と連動することによって価値を生み出しているという気づきが得られたことが何より大きい(図表)。

 

あらためて指摘されると、当たり前のことのように感じるかもしれない。しかし、実際の企業が突き当たっている問題の原因のほとんどは、価値創造のプロセスの左回転が分断されている、あるいは流れが滞ってしまっていることにある。

 

企画部門は経営者の意向に沿って完璧な戦略を立てようとするが、営業現場の事情を見ないで机上の空論を展開している。営業部門は売上目標を達成しようと必死になって努力するけれど、営業部門のなかだけで頑張っていて、顧客が本当に何に困っているのか、何を求めているのかがわからずに製品・サービスを押し込もうとしている。製造部門は製造部門で、日々賢明に製品づくりと品質向上を目指してたゆまぬ努力をしている。けれど、製造部門のなかだけで必死になっており、顧客のニーズに目が向いていない。このように、それぞれの力が連動せずに努力の成果が伝わらない状態だと、製品・サービスは売れず売上・利益は伸び悩むという結果としてあらわれる。

 

[図表] 価値創造のプロセスと各部門の連動

 

こうした状況は、企業と接してみると、実際に山ほどある。

 

5つの資産それぞれが孤立しているだけではなく、右周りに逆回転しているケースさえ少なくない。このような状態が続けば、製品・サービスはますます売れなくなり、収益性が悪化していくのは明白だ。それぞれの部門だけで必死に頑張っても、思ったような成果は得られず、ただただ疲弊していくばかりとなる。

 

「セクショナリズムに陥ってはいけない」とよくいわれる。部門間のコミュニケーションをとることが重要で、ときには部門横断的なプロジェクトチームが推奨される。それが、なぜ必要なのか、概念図として示されることで納得しやすくなる。これが、フレームワークの効果である。

金融資産を生み出しているのは「顧客」

5つの資産はどれをとっても重要であるが、それぞれに役割や性質は異なる。とりわけ、物的資産と金融資産、人的資産と顧客資産の2組の資産は、おたがいがかならず相関関係にある。

 

バリューダイナミクスのフレームワークで左右に配置された2つの概念の資産は、貸借対照表に資産として計上されるか否かという意味での「見える」「見えない」という対比だけではなく、「伝統的な概念」と「新しい概念」という対比でもあり、そして因果、つまり「原因」と「結果」の関係にあるということもできる。または「客観」と「主観」、「左脳」と「右脳」の関係にあるともいえるだろう。

 

因果でいうところの結果にあたるのが、物的資産や金融資産である。これらは、次の1年の企業活動のための土台となって価値創造のプロセスを回すという意味できわめて重要な資産といえるが、あくまで企業活動の結果として創出されるものである。

 

これに対して、因果でいう原因をつくり出しているのが見えない資産である。

 

金融資産や物的資産は企業活動の土台になる大事な資産ではあるが、それらの資産を動かして企業活動を成り立たせているのは人的資産と顧客資産であるという事実を忘れてはならない。企業活動を行うにはかならず資金がいる。しかし、資金があるだけでは事業として動かない。計画を立て、実行する人間がいる。ゆえに、金融資産は人が使ってこそ、その持っている潜在的な価値が、実際の物体としての価値、すなわち物的資産に転換する。

 

その際、使う金融資産の金額は同じでも、人的資産の質や量によって、物的資産の質や量もまた変わってくる。

 

そして、生み出された製品・サービスに対して、顧客がキャッシュを支払うという行動を選択することによって、初めてビジネスが成り立つ。ここで重要なことは、物があるから売れるのではない、ということである。

 

企業は、事業活動として製品・サービスを提供するが、それを買うか買わないかを決めるのはすべて顧客という人間である。どれだけ素晴らしい製品・サービスをつくり出すことに成功しても、顧客が購入するという行動を起こさないかぎり価値を生み出すことはない。

 

つまり、物的資産そのものが金融資産をつくっているのではなく、金融資産を生み出しているのは唯一、顧客なのである。

 

ここで価値創造のプロセスを思い起こしてみる。人的資産が物的資産を使って製品・サービスをつくり、顧客がキャッシュを支払うことで金融資産がつくられていくというように、人的資産→物的資産→顧客資産→金融資産と循環していくわけだが、物的資産や金融資産そのものは動かない。これらを使い、稼働させるのは人間だ。それらは従業員やサポーター、顧客が毎日行っている一つひとつの判断や行動の集積が企業活動そのものといえる。つまり、価値創造のプロセスがぐるぐる回転していくためのエンジンの役割をはたしているのは、見えない資産であり、それはすべて人間の営みであることがわかる。

 

であれば、従業員やサポーターがみずから持っている情熱(ワクワク)、イキイキと働くための環境やシステム、福利厚生、あるいは顧客からの支持を高めるための活動、マーケティングやプロモーションなどの施策が価値創造のプロセスを回転させる力に大きく影響するのは明白だ。

本連載は、2017年5月13日刊行の書籍『「見えない資産」経営 企業価値と利益の源泉』(東方通信社)から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載企業価値をより高める―「見えない資産」の創り方

株式会社バリュークリエイト 代表取締役
公認会計士
米国公認会計士

1987年青山学院大学経営学部卒業後、アーサーアンダーセン東京事務所に入社。1991年から9年間、アーサーアンダーセンのサンフランシスコ、シアトル、アトランタの3拠点で公認会計士として経験を積む。2000年に日本に帰国、ベンチャー企業でCFOとして部門を統括する。01年(株)バリュークリエイトを設立。ベンチャー企業から大企業まで企業の規模・業種を問わず、経営者に企業価値創造の視点を提供している。現在、慶應義塾大学大学院経営管理研究科非常勤講師、(株)SUMCO社外取締役および(株)大塚家具社外取締役を務める。日本・米国公認会計士。

著者紹介

「見えない資産」経営―企業価値と利益の源泉

「見えない資産」経営―企業価値と利益の源泉

三富 正博

東方通信社

企業価値というと、金融資産や物的資産といった「見える資産」ばかりが注目されがちだが、著者はそのほかにも組織資産や人的資産、顧客資産といった「見えない資産」があることを強調し、それこそが企業価値と利益の源泉である…

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