今回は、海外の例を中心に「ソーシャルレンディング」のビジネスモデルについて見ていきます。※本連載では、ソーシャルレンディングに特化した国内唯一の専門メディア「クラウドポート」代表取締役の藤田雄一郎氏と共同創業者の柴田陽氏が、急成長するソーシャルレンディングの最新事情をご紹介します。

グローバル全体の市場規模は90兆円に迫ると予測

2016年における国内ソーシャルレンディングの市場規模は699億円※1と、前年比の成長率も高い水準ですが、海外に目を向けるとまだまだ発展の余地が感じられます。本連載では、米国を中心に海外のソーシャルレンディング事情を紹介します。

 

米国のフィンテック市場において、ソーシャルレンディングの存在感は際立っています。リサーチ会社のCrowdfunding Industry Report※2によると、2015年における米国の市場規模は1兆2586億円(1ドル100円として換算)。2016年にはさらなる成長が予想されています。

 

実際にソーシャルレンディングサービスの1つ、レンディングクラブは、2016年に8700億円※3、プロスパーは2200億円の融資を実行しており※4、これらだけでも1兆1000億円の市場規模を誇ります。2016年の日本国内市場の699億円※5に対し、米国は2サービスだけで1.5倍以上と、大きな差がみられます。

 

グローバル全体での市場規模は、2015年に2兆6160億円に到達し、リサーチ会社のTransparency Market Researchによると、2016年から2024年までに48.2%の年平均成長率を保ち、89兆7850億円の市場規模まで成長すると予測しています※6。グローバル規模で見ても、ソーシャルレンディングはまだ火がついたばかりであることが窺えます。

 

※1 成立額ベース、クラウドポート調べ。

※2 グローバル全体のソーシャルレンディング市場規模(米国のクラウドファンディング市場規模/グローバル全体のクラウドファンディング市場規模)
https://www.researchandmarkets.com/reports/3164114/transformation-of-peer-to-peer-lending-in-the-u-s.pdf

※3 https://www.lendingclub.com/info/statistics.action

※4 https://www.wsj.com/articles/online-lender-prosper-reports-wider-loss-on-loan-slowdown-1490027516

※5 クラウドポート調べ

※6 https://globenewswire.com/news-release/2016/08/31/868470/0/en/Increasing-Small-Business-Units-to-Act-as-Building-Blocks-for-Peer-to-Peer-Lending-Market.html

最大規模を誇る中国市場だが、詐欺事例も・・・

中国における初期のソーシャルレンディング業界では、そのリベラルさから多数の事業者が立ち上がりました。結果として市場規模は大きく成長した一方、その融資スキームを利用した詐欺的事業者が横行するという問題も生じています。

 

2015年に発覚したEzubao社の架空投資詐欺事件では、自転車操業の実態が発覚し、総額約7000億円の被害を生み出しました。このような問題もありますが、中国におけるソーシャルレンディング市場は今現在も急激な成長を遂げており、その規模はグローバルにおいても最大規模を誇ります。

米国に多いビジネスモデルは個人間融資

ソーシャルレンディング事業者のビジネスモデルは、国別に違った特色を有します。ソーシャルレンディングのパイオニアである米国では、P2P(peer to peer)レンディングと呼ばれる事が多く、その名の通り個人間融資が中心です。米国ではクレジットカードのリボ払いを、相対的に金利の低いP2Pレンディングに借り換えるというニーズがあり、高い金利の支払いに苦慮する個人を中心に広く利用されています。

 

中国では消費者ローンのみならず、事業者向けローンも大きな割合を占めています。英国の経済学者によると、事業者向けローンの20%から40%を法人向け融資が占めているとされており、欧米のソーシャルレンディングと比べて事業融資の割合が高い水準となっています。

 

このような背景には、中国における中小企業の金融機関からの資金調達が難しい点があげられます。同国の中小企業では、親戚など人のつながりを媒介して資金調達が行われてきました。一方で、縁故が無い場合は資金調達の機会が得づらい環境にあり、広く資金を募ることができるソーシャルレンディングは、こうした潜在的な資金ニーズを満たしているのです。

 

日本国内におけるソーシャルレンディングは事業融資が大半を占めます。個人向け融資は、過去に幾つかの事業者で行われていたものの、貸し倒れが多発したことで頓挫しました。

 

国内の消費者ローンは、既にノンバンクが担っており、当時のソーシャルレンディングは活路を見出せなかったのです。その後、法人向け融資へと方向性を改め、国内ソーシャルレンディング市場は好調な成長曲線を描いています。融資先の種類は、不動産のみならず、エネルギー系の事業から個人向け融資まで、年々多様化しています。

 

グローバルのソーシャルレンディング市場規模はますます成長していくと予想されていますが、日本国内では盛り上がり始めたばかりのため、今後のさらなる成長が期待されます。


次回はソーシャルレンディングを取り巻く税や法制度を解説します。

 

<POINT>

●1事業者のみで約9000億円の融資を行う米国市場

●2024年にはグローバルの市場規模が90兆円に迫る勢い

●市場発展の背景は国別に異なる

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