前回に引き続き、日本ファンド事件について見ていきます。「会社が労働裁判で勝つための対策」が今回のテーマです。※本連載は、堀下社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の堀下和紀氏、穴井りゅうじ社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の穴井隆二氏、ブレイス法律事務所所長で弁護士の渡邊直貴氏、神戸三田法律事務所所長で弁護士の兵頭尚氏の共著、『労務管理は負け裁判に学べ!』(労働新聞社)より一部を抜粋し、会社側が負けた労働判例をもとに労務管理のポイントを見ていきます。

パワハラに関する指導・教育を徹底し、意識を高める

パワハラは、予防が最も重要です。そのためには、まず組織のトップが「パワハラは職場から根絶させる」ことを明確にメッセージとして示すことが重要です。さらに、組織の方針や取組みについて周知・啓発を実施することがパワハラ防止には必要不可欠です。

 

これに伴い就業規則にパワハラ防止の関係規定を設けたり、「パワハラ防止規程」の策定をすることです。また、パワハラと業務上の指導との境界について、具体的な事例を交えて、教育研修を実施する必要があります。研修では、「指導との境界」はもちろんのこと、パワハラのリスクとして、うつ病などの精神疾患者ができることや職場風土の悪化、労災として認定される可能性があること、加害者および会社の法的責任について徹底的に理解させ、パワハラに対する意識を高めてもらうことが肝要です。

 

また、現在、社内でパワハラがないか、そのおそれがないかの実態を把握するアンケート調査も防止の観点からは有効だといえます。事前に警鐘が確認できれば、対策は立てやすく、予防効果は高くなるでしょう。

パワハラの相談ができる体制を整えることも大切

会社はパワハラを認知した場合、迅速に対処する必要があります。よくある問題として、有能で仕事ができる上司であるが、パワハラのおそれがある人としてマークしていても、目先の利益を重視し、その問題を放置することがあります。しかし、問題を放置すれば訴訟に発展することもあり、会社のイメージ低下という大きなダメージを受けることになります。会社は目先の利益だけではなく、長期的な利益を考えなければなりません。パワハラの放置はリスクを増大させます。

 

パワハラ発生時には、すぐに被害者や目撃者が相談できるような体制づくりが必要です。そのためには、社内外に相談窓口を設置します。相談の段階で初動対応ができれば、大きな問題に発展する前に解決できるでしょう。また、職場のパワハラ対応責任者の選任や弁護士や社会保険労務士などの専門家との連携も有効な手段です。

 

次にパワハラについて相談があった場合は、その事実を迅速に確認する必要があります。事実確認のため、当事者や目撃者、証言者に対して事情聴取を行います。

 

結果、パワハラが確認できたら、加害者への懲戒処分を検討する必要があります。検討の際には、加害者の弁明の機会、反省の言葉、改善の見込みなどを勘案して、懲戒規定に準じて懲戒処分を決定します。また、加害者に対しては、再発を防止するために「再発防止研修」を実施するとより効果的です。

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