今回は、広島市が取り組む「団地」の活性化事例を取り上げます。※本連載は、株式会社マエダハウジング、株式会社マエダハウジング不動産の代表取締役・前田政登己氏の著書、『「困った空き家」を「生きた資産」に変える20の方法』(株式会社ザメディアジョン)より一部を抜粋し、空き家の具体的な活用法を紹介します。

子育て世代を呼び込めば、団地はまた30年存続できる

広島市が出している「住宅団地の活性化に向けて」という素案には、「住宅団地の誕生から成熟まで〜半生のイメージ〜」としたグラフがあり、団地完成から5〜15年後が成長期、15〜30年後が活性期、35年後からは成熟期と続き、60年後までの予測される状況が記されています。30〜40代の子育て世代が多く暮らす成長期は子どもの数が多く、活性期には子どもが進学や就職で団地から転出。成熟期になると親世代が一斉に高齢化し、だんだん空き家が増えていきます。

 

[図表]住宅団地活性化ハンドブック

広島市内における取組事例等を紹介した「住宅団地活性化ハンドブック」
広島市内における取組事例等を紹介した「住宅団地活性化ハンドブック」

 

これは、商品や会社のライフサイクルとも似ています。会社だと創業期、成長期があって、成熟期には少しずつ低迷していくため、新しい事業を打ち出すなどして業績向上を図ります。「1企業30年説」によれば、30代で創業し、60代で次の世代にバトンタッチするもののうまくいかず、会社がなくなってしまうというパターンが多いといいます。しかし、このタイミングでうまく世代交代ができれば次の30年も会社は存続できます。団地も同様で良いタイミングで、若い子育て世代を多く呼び込むことができれば、その団地はまた30年存続できるでしょう。

 

現在、空き家の多い住宅団地で実践されている事例には空き家を改装してグループホームにしたり、みんなが集まるコミュニティーの場にしたりなどの試みがあります。それも良い方法だと思いますが、根本的な空き家問題の解決にはならないような気がします。やはり、「団地に子育て世代をいかに呼び込むか」が一番のポイントではないでしょうか。

 

子育て世代を団地に呼び込むことで、街に再び活気を取り戻すことができる
子育て世代を団地に呼び込むことで、街に再び活気を取り戻すことができる

リフォーム費用の一部を補助し、空き家を再活用

広島市の素案の中にも、「住宅団地の空き家への住み替え促進」として、町内会・自治会等と連携し、空き家の解消や子育て世帯の住み替えのための支援を行う案が提示されています。2015年度には、「広島市子育て世帯住替え促進リフォーム費補助事業」を実施。広島市内の169団地内にある条件を満たした住宅を、子育て世帯の入居を目的にリフォームする場合、費用の一部を補助するというものです。

 

空き家を無理のない予算内で購入し、リフォームやリノベーションをして住むことが可能になれば、空き家ストックがうまく循環し、子育て世代を団地に呼び込むことができるように思います。かつては中古住宅を購入するという選択肢は少なかったのですが、リノベーションという言葉が広まったことで、中古住宅への抵抗感も少なくなってきました。同様に、空き家への抵抗感はまだ大きいようです。なぜならば、人が住まなくなって空き家になった途端に家は傷んでいくからです。

 

家は、人が住んでいないと空気の流れが悪くなり、水道の蛇口からもさびた水が出るようになります。そうならないためには、自分で管理ができないときは空き家管理サービスなどを利用して月に1回程度、1時間だけ窓や戸を開放して空気を入れ換えてもらったり、水道の蛇口を開けて通水してもらったりしなければいけません。

 

今のところ、空き家購入に対して抵抗感のある人が多いのが現状ですが、私たちは広島県で、中古住宅を買ってリノベーションすることの価値観を切り開いてきたという自負があります。だから、今後は空き家を買ってリノベーションすることの価値観を広めていきたいのです。もっと言えば、空き家を買ってリノベーションをして、空き家の活用を促すことで、「空き家再活用」に積極的に取り組んでいきたいと思っています。

 

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