今回は、創業融資の審査に通るためのポイントとして自己資金と経験を見ていきます。※本連載は、起業コンサルV-Spiritsグループの代表・中野裕哲氏の著書、『50歳からの起業術』(大和書房)より一部を抜粋し、シニア起業に必要な資金の調達方法について具体的に紹介します。

自己資金は「出所」を細かくチェックされる

「この年齢でも融資が受けられるのだろうか・・・」

 

50歳からの起業では年齢を気にする人も多いですが、55歳以上は金利が優遇される制度もあり、むしろ支援強化の対象です。60歳を過ぎて5年返済の借り入れが可能なケースも数多くあります。

 

たしかに90歳を超えて何百万円も借りるのは難しいでしょうが、「〇歳になったら無理」と年齢だけで却下されるものではありません。融資の審査はあくまで全体を見ての総合判断。年齢が同じでも健康状態や資金面などその人自身の状況、どんなビジネスをするのかによって大きく異なります。

 

●自己資金、経験、説得力、資金使途が重要

 

では、日本政策金融公庫や自治体の窓口となる金融機関に創業融資を申し込んだとき、可否を決定づけるのはどんな点なのかを見ておきましょう。

 

審査ポイントは大きく分けて次の4つです。

 

①自己資金

②経験

③説得力

④資金使途

 

では、ひとつずつ説明していきましょう。

 

①自己資金

 

融資の要件を満たす自己資金は、前述した通り基本的に3分の1から2分の1を用意したいところです。ただし、ほかの要素が飛び抜けてよく、売上げが確実に見込める場合など、自己資金の割合がかなり低くても審査に通るケースはあります。

 

要件を満たす金額があれば受けられるかというと、そうではありません。そのお金をどのように手にしたのかも評価の対象になります。計画的にこつこつと貯金したお金であれば、その努力と金銭の管理能力が高く評価されます。

 

一方、親からもらったお金は、あまり評価されません。親に出してもらうのは「甘え」と見なされます。本気で起業したいなら、貯められたはずだという見方をするのです。

 

また、人に借りたお金もそのぶんを除外して審査されます。「これはタンス預金で、借りたお金ではない」と主張しても、現金がぽんと出てきた状況では、貯金してきたことが証明できないので難しいでしょう。

 

自己資金については、過去半年から1年の通帳と給与明細などの証拠をつき合わせて細かくチェックされると考えてください。大きな額が振り込まれていれば、どういう経緯で得たものなのかを追究されます。

自らの経験を活かした起業は、審査を通りやすい

②経験

 

これまでの職歴、起業する業種での経験年数、経営者としての能力が問われます。キャリア数十年のエンジニアであっても、まったく分野の異なるカフェの開業となれば、簡単にはお金を貸してもらえません。

 

逆に言えば、自らの経験を活かしてのシニア起業は、審査に通りやすいということです。加えて、子会社のトップについていたなど経営者としての能力を示す実績があれば、大きくプラスに働きます。

 

お金の管理能力、返済能力をチェックするために、個人信用情報機関の事故情報も調べられます。事故情報とは延滞や強制解約、債務整理などのこと。あまりご存じないかもしれませんが、個人信用情報機関に登録された個々人の情報は、各金融機関が共有できる仕組みになっているのです(本書のミニ用語解説参照)。

 

自己破産したとブラックリストに載っていれば、基本的に借り入れはできません。カードローンを頻繁に利用していれば、無計画に支出していると見なされます。

 

ただし、過去の汚点は永遠についてまわるのではなく、5年または10年で消えます。20代でクレジットカードを使い過ぎて返済に苦労した経験があっても、その後50代、60代まで事故を起こさずにきていれば、まず問題はないでしょう。

 

心配な人、心当たりのある人は、開示を求めて確認しておくことをお勧めします。

 

次回は、審査ポイントの③説得力と④資金使途を見ていきます。

50歳からの起業術 シニア起業と独立を成功に導く実践的ノウハウ61

50歳からの起業術 シニア起業と独立を成功に導く実践的ノウハウ61

中野 裕哲

大和書房

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