今回は、決算書の仕訳のルールを説明します。※本連載は、ウエキ税理士法人の代表税理士で、中小企業の再生支援にも従事する中田隼人氏による著書、『コンサルティング機能強化のための個人事業主の決算書の見方・読み方〈2017年度版〉』(経済法令研究会)より一部を抜粋し、個人事業主の決算書の見方・読み方を、図表を交えてわかりやすく紹介します。

資産が増加すれば左側へ、負債が増加すれば右側へ

仕訳のルールは、いたって単純です。以下の図表1の4つの箱の位置を覚えてください。

 

[図表1]仕訳のルール

 

資産が増加すれば左側です。負債が増加すれば右側です。費用が増加すれば左側です。収益が増加すれば右側です。減少は、左側と右側が入れ替わると覚えておきましょう。

図表で確認する仕訳の「書き込み方」

<仕訳の実践>

 

では、個人事業を開始したとしましょう。長年勤めていた会社を辞めて卸売業を始めました。

 

❶貯蓄していた1,000万円を元手にスタート

 

現金である資産が1,000万円増加したので、左側に書き入れます。増加した理由は元手である元入金1,000万円です。いきなり仕訳のルールの4つの箱に入らない元入金が登場しました。これはあまり出てこないので、ここで、元入金の増加は右側と覚えてください。ただ、複式簿記は片方の書き入れができれば、もう片方は取引の原因を考えたら出てきやすいでしょう。簿記では、現金や元入金などを勘定科目といいます。

 

❷営業のために車を100万円で購入しました

 

車両である資産が100万円増加したので、左側に書き入れます。現金で購入したので現金である資産が100万円減少しました。資産の減少は、反対に右側に書き入れていきます。

 

❸商品300個600万円を掛で仕入れました(1個2万円)

 

仕入は費用の増加なので左側に書き入れます。

 

掛とはツケのようなものです。商品の仕入を行うたびに現金を支払うのではなく、例えば毎月20日締めでしたら、前月21日からの1ヵ月間の仕入が集計されて請求書がきます。仕入と現金の支払いとは時期がずれることになります。

 

買い物で使うクレジットカード払いと同じです。服を買ったときにお金は支払わず、支払いは翌月以降になるはずです。

 

簿記では、発生主義といって現金を支払ったときに仕入を計上するのではなく、商品の引渡し時に仕入を計上することになります。そして、現金を支払うまでの間は買掛金として負債に計上しますので、買掛金は仕訳の右側に書き入れることになります。

 

❹仕入れた商品のうち100個500万円を掛で販売しました(1個5万円)

 

売上は収益増加なので右側に書き入れます。現金を回収したときに売上を計上するのではなく、商品を引き渡したときに売上を計上します。売掛金は買掛金の反対で、販売する側のツケとなりますので、資産の増加として左側に書き入れることになります。

 

❺買掛金のうち400万円を支払いました

 

買掛金の支払いで、買掛金という負債が減少していますので左側に、一方、資産である現金が減少していますので右側にそれぞれ書き入れます。

 

❻売掛金のうち300万円を回収しました

 

売掛金の回収で、現金という資産が増加していますので左側に、売掛金という資産が減少しますので右側にそれぞれ書き入れます。

 

この話は次回に続きます。

コンサルティング機能強化のための個人事業主の決算書の見方・読み方〈2017年度版〉

コンサルティング機能強化のための個人事業主の決算書の見方・読み方〈2017年度版〉

中田 隼人

経済法令研究会

本書は、図解を多く用いることで、簿記の基礎や全体像が理解しやすい作りとなっています。さらに、個人事業主の決算書の見方・読み方を初学者でもわかるようコンパクトにまとめました。 2017年度版は「攻めの投資」を支援する…

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