共有不動産の使用をめぐるトラブルの典型例と解決方法の概観

不動産の共有に関する法的紛争を解決するにあたっては、法律的な規定や解釈について幅広い知識と理解が必要となります。本連載では、弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士・三平聡史氏の著書『共有不動産の紛争解決の実務』(民事法研究会)の中から一部を抜粋し、共有不動産に関する紛争の基本的な考え方と典型事例を見ていきます。

決定権限のある権利者が複数存在する共有不動産

共有に関する法的な紛争は非常に多くあります。代表的なものは、土地・建物といった不動産を複数の者で所有(共有)することから生じる紛争です。不動産そのもの以外にも、借地権や株式を共有していることによる紛争も多くみられます。

 

共有に関する法律的な規定や解釈はとても多く、また複雑で不明確な解釈・規範も多いです。紛争の解決において最適な結果を獲得するためには、法的な権利関係・判断基準の把握を徹底することが必須の前提となります。

 

本書では、主に共有不動産に関する紛争の解決に必要で有用な情報を、紛争の当事者、紛争解決に携わる法律実務家が、できる限り効率的に把握できるよう、実務的な視点で分類・整理して提供します。基本的に共有の不動産を前提として説明しますが、他の財産の共有についても適用されるものが多いです。

 

1つの事案について、関係する規定・解釈論は広範囲に拡がります。実務的な紛争解決に必要な知識を習得するためには、最初に、共有に関する法律問題の典型事例を横断的に把握すると効率的だと思います。

 

そこで、本章では、共有不動産に関する基本的な法律問題の考え方、紛争解決において使用頻度の高い重要な知識を効率的に概観します。解釈の対立などの問題の所在を指摘し、解説している項をそれぞれ示すだけにとどめます。

 

⑴ 使用方法の協議などの意思決定
共有という状態においては、財産としての機能である使用・収益・処分(以下、これらを「使用方法」といいます)について、決定権限のある権利者が複数存在します。そこで、共有物に関するいろいろな行為については、共有者間の協議や協力が必要になります。

 

共有不動産に関する決定事項の具体例は、誰が住むか、賃貸するか、建て替えるかどうかなどです。特に、共有不動産を収益化する場合には決定事項が多く、また判断すべき事項が継続的に発生します。たとえば、賃貸する場合の条件や入居希望者の審査などです。

 

民法には、共有物の使用方法の意思決定(合意)に関する規定があります。決定する内容によって、決定するための要件が違います。たとえば、共有持分の過半数、共有者全員の賛成が必要など要件が法律上規定されています。

 

実際に意思決定をする場合には、共有者間の連絡・通知には工夫が求められます。また、意思決定を終えた後に、共有者が変わることがあります。相続や共有持分の譲渡があった場合が典型例です。この場合には、合意の効力が新たな共有者に及ぶかどうかが問題になります。

 

前記のように、共有者の意思決定には多数決を用いることもあります。そうすると、少数の共有持分の共有者は意向が反映されないことになり、このような共有者は法律上の対抗策を行使することを検討します。この状況は、会社における株主(株式)と似ていますが、ルールは大きく異なります。株式については、支配力が小さい者の保護のための直接的な規定・制度はありません。この点、株式については、会社法に、支配力が小さい者の保護のための規定・制度が整備されています。しかし、共有に関しては少数者保護の細かい規定はありません。そのため、一般的な規定・制度を駆使する必要があります。

問題が複雑化しやすい親族などの特別な関係

⑵ 共有者の人が建物に居住するケースの明渡請求・金銭請求

共有不動産を共有者全員が占有・使用しているケースは少なく、共有者の人(世帯)が占有・使用している、つまり居住しているケースが多いでしょう。通常は、共有者同士には親族などの特別な関係があります。共有者間の関係が良好であれば特に問題は生じません。しかし、関係が悪化すると、このような状態は不公平であるという発想が生まれます。法律的にも、不公平の是正措置があります。具体的には、明渡請求や賃料に相当する損害金の請求(金銭請求)です。

 

判例の理論では、明渡請求は否定され、賠償金の請求のみが認められる傾向があります。しかし、これらの判断には、背景にある特殊事情が大きく影響します。事情によっては例外的な判断となることも多いので注意を要します。

 

⑶ 共有不動産の経費負担に関する求償や共有持分買取り

不動産は所有すること自体によりコストが生じます。代表的なものは固定資産税です。

 

共有となっている場合は、共有者で負担を分担することになります。実際には、共有者の 1名が立て替えた後、他の共有者に請求すること(求償)が多いでしょう。これに関して、立て替えた経費を支払ってくれないという紛争がよくあります。この場合は、支払わない共有者の共有持分を強制的に買い取るという法的な救済措置があります。共有持分買取権と呼ばれる権利です。

 

実際には、支払わない理由について意見が対立することが多いです。他の債権・債務の清算、つまり相殺の問題が絡むという状態です。共有者同士には親族関係などの特別な関係があるので、問題が複雑化しやすいのです。

 

⑷ 共有不動産の賃貸借契約──共有の収益不動産

賃貸マンションやテナントビルなどの収益不動産が共有となっているケースもよくあります。この場合、メンテナンス料、賃料その他の条件設定、入居希望者の審査などの運営に関する事項で、共有者の間で決定すべきものがとても多くなります。共有者同士の関係が悪化すると管理・運用が非常に難しくなります。収支の分担・配分について熾烈な対立に
発展することも多いです。

 

また、賃貸借契約の賃貸人を誰にするかという問題もあります。賃貸借契約書の記載におけるちょっとした違いが、法律的に大きな違いを生じること
もあります。

本連載は、2017年2月刊行の書籍『共有不動産の紛争解決の実務』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「共有不動産」に関する紛争解決~基本的な考え方と典型事例

弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所 代表弁護士

昭和48年埼玉県大宮市生まれ、平成8年早稲田大学理工学部資源工学科卒業、平成10年司法書士試験合格、司法書士登録(埼玉司法書士会、現在は東京司法書士会)、平成12年司法試験合格、平成14年弁護士登録(第一東京弁護士会)、朝日中央綜合法律事務所入所、平成19年弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所開設。

著者紹介

共有不動産の紛争解決の実務

共有不動産の紛争解決の実務

三平 聡史

民事法研究会

共有不動産の管理、他の共有者や第三者に対する明渡請求・金銭請求、共有関係解消のための共有物分割・共有持分買取り・共有持分放棄などを事例に即して詳解!実務で使用する通知書・合意書・訴状などの書式、知っておくべき判…

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