前回は、廃業による不動産の売却で避けられない、「家族」の反対を解決する方法を説明しました。今回は、「廃業の告知」はどのタイミングで行うべきかを見ていきます。

関係取引先へは、廃業決定後「なるべく早く」連絡

不動産の売却とともに廃業となれば、多かれ少なかれ取引先に影響が及びます。仕入先は新たな取引先を探さねばなりませんし、大口の受注者の場合には売上が急減して経営を圧迫することもあり得ます。

 

また、債務超過の状態で廃業すると、取引先は売掛金などの信用取引分の回収が難しくなります。最悪の場合、信頼関係で結ばれ長く取引を続けてきた会社が連鎖倒産するかもしれません。「他人に迷惑をかけたくない」という思いが強いために事業を続けざるを得ないと考える経営者は多いはずです。

 

しかし、このような状況では不動産などの資産をなるべく高く売却して返済資金や円満な取引先との妥協点を見出すのが最善の道と言えます。

 

多くの事業は多様な取引先との連鎖の上に成り立っており、廃業により連鎖の一環が消えれば関係者には大きな影響が生じます。

 

関係取引先への影響を最小限に抑えるためには、廃業決定後なるべく早く連絡することが有効です。廃業までに時間があれば、取引先は別の調達先や買手を見つけるなどの対応がしやすくなるので、事業へのダメージを抑えることができます。

相手によって伝えるタイミングを変えることが大事

ところが、廃業の情報が外に出ると、これまで解説してきた通り、不動産売却の成否に大きく影響する危険性があります。

 

従業員や家族が知れば反対の声を上げるでしょうし、金融機関は債権の回収や担保の保全に走ります。さらに地域の買主候補に情報が広がれば、売却価格や条件の交渉で、不利な立場に追い込まれてしまいます。

 

廃業について知らせる場合は、タイミングや相手をよく見極めることが大切です。売買契約が完了した時点や絶対に漏らすことがない人物だけに伝えるなど、情報管理を優先する必要があるのです。

 

その上で円満に廃業できるよう交渉を進めることになりますが、特にデリケートな配慮が求められる場合もあります。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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