前回は、「中古区分」「中古一棟」のメリット・デメリットについて説明しました。今回は、不動産投資における節税の基本を踏まえたうえで、減価償却を利用したタックスマネジメントの考え方を見ていきます。

購入時の工夫で個人でもタックスマネジメントが可能

中古一棟は新築物件よりも節税効果が高いというメリットがあります。新築区分では本来の節税にならないというのは連載第7回で既に述べた通りですが、新築一棟との比較においても中古一棟のタックスマネジメントの優位性は明らかです。

 

その理由を説明するため、不動産投資における節税の基本をまず説明しましょう。

 

日本の税制では、個人は給与所得と不動産所得は共に総合課税となります。総合課税とは、複数の所得を合算して課税する方法のこと。給与所得と不動産所得は損益通算され、その額に税率をかけることで、所得税と住民税が確定します。適切なタックスマネジメントを行わない場合、もともとの給与所得に不動産所得が単純に加算されてしまい、課税所得がアップし、税負担が重くなってしまいます。

 

日本の所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が高くなっていきます。現状の税制では、所得税率は課税所得195万円以下の5%を下限に10%、20%、23%、33%と上がっていき、1800万円超の40%が最高税率です。住民税は一律10%なので、課税所得が1800万円以上の場合、税率は50%となります(平成26年10月現在)。

 

さらに平成25年度税制改正において所得税の増税が決定しました。平成27年以降、課税所得4000万円超という区分が新設され、45%の税率が適用されます。住民税と合わせて実に55%です。高額所得者にとって厳しい税制改正となりました。

 

不動産投資の規模を拡大していくと、多くの場合、所得税・住民税の税率は43〜50%となります。収益物件を購入する際に多額の借入を行い、得た所得に対して、半分近くを税金で徴収されてしまっては何のために投資をしているのかわかりません。

 

このように、個人で収益物件を所有すると、投資規模の拡大によって税率があがり、最終手残りが少なくなります。税金を抑える方法には、資産管理法人を活用することが一つの方法としてあります。

 

しかし法人活用以外にも、購入時に工夫をすることで税金のコントロール(タックスマネジメント)が可能となります。

 

個人の場合、具体的な節税法は次の通りです。不動産投資をするということは、個人事業主として不動産貸付業を始めるのと同じです。個人事業主は税額を確定するために毎年、確定申告を行う必要があります。申告の準備はいささか複雑で大変ではある一方、青色申告の届け出を提出し、適正な会計処理をすれば、青色申告特別控除65万円の控除が受けられます(事業的規模でない場合は10万円)。さらに事業で使った費用を経費として計上できるため、税金をある程度コントロールできるのです。

 

また青色申告の場合、同居家族に不動産貸付業の何らかの手伝いをしてもらうことで、給与(専従者給与)を支払うことも可能です。そうすれば所得分散による節税が期待できるでしょう。

 

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なぜ中古一棟買いが良いのか? ポイントは減価償却費

ここまでは教科書通りのタックスマネジメントです。もっと効果的なのは、減価償却費を利用して節税を図る方法です。減価償却とは、不動産や設備に投資した費用を一定の期間にわたって費用分配する会計手続きのことです。

 

不動産投資(不動産貸付業)はさまざまな経費がかかりますが、帳簿上の最も大きな経費は減価償却費です。減価償却費を多く計上できれば、不動産所得を大きく圧縮できるのです。しかも実際にお金が出ていくわけではないため、手残りのキャッシュが増えることを意味しています。

 

不動産投資には日々のメンテナンス費用や退去者が出たあとの原状回復費用など、定期的にも突発的にもさまざまなコストがかかります。タックスマネジメントにより、いかにキャッシュを手元に置いておけるかが重要です。

 

この節税効果が最も有効に働くのが中古一棟です。ポイントは、単年あたりの減価償却が多く取れる物件を選定すること。具体的には、中古の法定耐用年数を超えた木造物件や軽量鉄骨造の物件です。

 

築22年以上の木造物件の減価償却期間は4年、築27年以上の軽量鉄骨造の減価償却期間は5年と、新築物件に比べて非常に短期間で減価償却費を計上できます。土地と建物の割合にもよりますが、短期での償却は所得税の圧縮に効果的なのです。

 

ただし、償却期間が短くても償却金額が少なければあまり意味はありません。減価償却資産である建物の金額を適正に大きくする必要があります。建物金額を大きくするには、売主との交渉が必要になります。よくいわれるような固定資産税評価額の土地・建物割合による按分は、土地・建物の金額が明記されていない場合において、一つの客観性のあるものとして採用されるもので、必ずしもこの金額割合で取引する必要はありません。

 

私のような中小企業の経営者にとっては、今期の会社利益をどの程度にし、納税額をいくらにするかを決めることは日々行っていることですが、たとえばサラリーマンの方々にとって、先述のように税金を自分でコントロールできるというのは、メリットのあることではないでしょうか。サラリーマンの方の手取りの給与額は、あらかじめ所得税や住民税などが源泉徴収された額です。確定申告の手間はかからないですが、受け取った時点で既に税金が引かれてしまっているため、基本的には自分で税金対策をすることはできません。

 

その点、不動産投資はタックスマネジメントの醍醐味が大きいといえます。私自身、サラリーマンをしながらはじめて収益物件を購入した際はそうでした。雇われの身だけでない、自分自身で事業を起こして経営者としての活動をする。そんな喜びの一端が味わえるのも、不動産投資の魅力の一つといえるかもしれません。

 

また、高額所得者の方や中小企業経営者の方にとっても、個人・法人で収益物件を保有することは、よりタックスマネジメントの恩恵を受けることができます。保有することでキャッシュフローを得つつ、税金のコントロールが可能な不動産投資は万人に有益な投資といえるでしょう。

 

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本連載は、2014年11月4日刊行の書籍『はじめての不動産投資 成功の法則』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

はじめての不動産投資成功の法則

はじめての不動産投資成功の法則

藤原 正明

幻冬舎メディアコンサルティング

東京五輪による地価上昇の影響もあり、注目を集めている不動産投資。 しかし、実際に投資をはじめようとしてもはじめての人には分からないことだらけでなかなか手が出ない、ローリスクと聞いて始めてみたけれど、成功というに…

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