四十肩・五十肩に関係する「医療機関」の問題とは?

前回は、四十肩・五十肩と似た症状を引き起こす、「腱板断裂」が悪化した事例を紹介しました。今回は、四十肩・五十肩に関係する「医療機関」の問題について探ります。

肩に痛みを感じたら、専門医に相談すべきだが・・・

肩の痛みの多くは四十肩・五十肩ですが、その中には腱板断裂のケースも少なくありません。また、これらの疾患以外でも肩痛が現れることがあります。

 

例えば心筋梗塞や肺がん、胃腸障害などの内臓疾患です。最近指摘されているのは、糖尿病の人は四十肩・五十肩になりやすいということです。さらには、更年期障害によるホルモンバランスの崩れや、精神的ストレスでも肩に痛みが生じることもあります。

 

ですから、自己判断で肩の痛みを放置しているのは非常に危険なことなのです。特に、じっとしていても痛いとか、激痛であったり、刺すような痛みの場合は、肩関節以外の病気も考えられますので、早期に医療機関を受診したほうが良いでしょう。逆に、肩や腕を動かしたときに痛い場合は、肩関節に原因があると考えられます。

 

だからといって、そうした判断は一般の人には難しいため、痛みがあるときには受診することが何より大切です。なぜなら、〝痛み〟は体の危険を知らせるサインだからです。

 

実際に、当院には肩の痛みを訴えて受診する人が年間約1200名、その1割が腱板断裂です。罹病期間も2年以上という人が多く、「もっと早く来てくれていれば・・・」と思うことがよくあります。その中には、近所の整形外科クリニックに通っていた人もいるのです。

肩関節に詳しくない整形外科医は意外と多い

なぜ、医療機関を受診しているにもかかわらず、手術が必要になる状態に至ってしまったのでしょう。これには、整形外科医にとって肩関節は、取っつきにくいところがあるからです。

 

関節は、腰や膝、肘など全身にありますが、その多くは前後左右の曲げ伸ばしというシンプルな動きをしています。

 

これに対して肩関節は特殊で、前後左右の動きだけではなく、ぐるりと回すなど、複雑な動きを可能にしています。それゆえに肩関節が安定して動くための構造も複雑で、この分野の研究が進んでいないために、まだまだ肩関節には謎が残されているのです。

 

現に、なぜ四十肩・五十肩になるのか、なっても自然に治ってしまうのはなぜなのかも解明されていません。そうなれば当然、肩関節に詳しくない整形外科医もいるわけで、正確な診断に至らず、効果的な治療が行われていないことも考えられます。

 

どの診療科も同じですが、整形外科の中にも腰痛の専門医、膝痛の専門医、関節リウマチの専門医などがいます。しかし、実は日本肩関節学会に所属している肩関節の専門医は数が少なく、全国に約1600人しかいないのです。

 

したがって、肩が痛くてクリニックを受診し、四十肩・五十肩と診断され、自然に治るからと放っておかずに、症状の改善が見られないときには専門医を受診することをお勧めします。

 

たとえ自然に治るタイプの四十肩・五十肩であったとしても、個人差はあるものの完全に治るまでには1年前後を要します。その間、つらい思いをして過ごすより、専門医にかかって適切な治療を受けることで、罹病期間を短くすることができるというメリットもあるからです。

 

罹病期間が長引けば、それだけ肩の動きが制限される期間も長くなり、肩関節が固まってしまうリスクが高まり、ただの四十肩・五十肩でも手術が必要になるケースがあることを覚えておいていただきたいと思います。

 

また、痛みや日常生活動作の制限は、生活の質も低下させ、不自由な状態は患者さんにとってストレスとなります。これまで普通にできたことができなくなるストレスは、本人が思っている以上に大きく、イライラしたり、集中力を低下させたり、やる気を失わせてしまいます。この状態が長く続くと精神的に落ち込み、ときには「うつ病」を発症することもあるのです。

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連載スポーツ整形外科医が教える 肩とその痛みの基礎知識

麻生総合病院 スポーツ整形外科部長

肩治療のスペシャリスト。
医学博士。日本整形外科学会認定専門医。日本肩関節学会代議員。日本整形外科スポーツ医学会代議員。昭和大学藤が丘病院兼任講師。
専門分野はスポーツ整形外科、肩肘関節外科、関節鏡視下手術。
1990年昭和大学医学部卒業。
現在は、同病院で勤務医として活躍するだけでなく早稲田大学ラグビー蹴球部のチームドクターを務める。

著者紹介

「肩」に痛みを感じたら読む本

「肩」に痛みを感じたら読む本

鈴木 一秀

幻冬舎メディアコンサルティング

四十肩(五十肩)の発症率は70%を超え、もはや国民病と言っても過言ではありません。 一般に、肩の痛みや違和感は放置する人が多いのが実情ですが、手遅れの場合、尋常ではない痛みと共に日常動作をままならなくなり、最悪の…

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