前回は、建設会社の経営者が採算度外視の受注に走る理由について取り上げました。今回は、建設会社の「粉飾決算」の実態を見ていきます。

決算が赤字になると経営事項審査がマイナスに・・・

前回に引き続き、建設業の経営改善の前に認識しておくべき5つの課題を見ていきます。

 

〈課題2〉利益が出ない年度には数字操作を行う

 

「売上至上主義」「意地とプライド」「人を遊ばせたくない」という3つが赤字受注に走る主な原因であるが、決算書まで赤字でいいのかというともちろん、そんなことはない。

 

いくつかの赤字受注がダメージとなり会社の利益が低下し、会社の決算が赤字になると、当然のことながら公共工事の入札ランクにつながる経営事項審査においてもマイナスに作用する。

 

加えて、決算が赤字になると、金融機関の目が厳しくなる。長期の融資だけではなく、短期のつなぎの融資にも影響を及ぼす可能性が高くなる。そこで建設会社の経営者が手を染めるのが、粉飾決算である。

 

はっきり言って、建設業に限らずどの業界でも、どの会社でも多かれ少なかれ数字の操作はしているだろう。

 

しかし、建設会社の多くは、上場企業でもないのに赤字決算を極力避けようとする。そのため、数字を操作して黒字に見せかけ、わざわざ税金を支払うために粉飾をしている。それはもちろん、経営事項審査の点数を高くするためであり、金融機関からマークされないためだ。

銀行の担当者は粉飾決算を見破るポイントを知っている

建設会社の粉飾の手法は、おおむね次のようなものだ。

 

まず、工期が複数年にわたる現場の場合、進行基準の使用により「売掛金」として売上を当期に多く付けたり、あるいは売上原価を「未成工事支出金」扱いにして次期分に送る。両方行うことも当然ある。

 

また、当期で終了する現場については、原価を次期の別現場に付け替え、当期の利益を水増しする。当然、次期の別現場の原価は加算され、利益が減って赤字になることもある。その場合は、さらに別の現場、翌期の現場に付け替えていくのである。

 

そのほか、工事代金がもらえない工事やもらえる見込みが低い工事でもとりあえず売上計上してしまうこともある。その期の利益はとりあえず出るが、すぐに「売掛未回収金」となり、貸借対照表の上でいつまでもその現場の売掛金が残る。もし、金融機関などから指摘された場合は、「近々もらえそう」という話を延々とする。

 

銀行の担当者に聞くと、決算書を見ただけではそうした粉飾はすぐには分からないという。しかし、「売掛金」や「未成工事支出金」「売掛金長期未回収額」を見れば大体分かる(図表)。

 

なぜなら、そういう処理を続けていくと、会社全体の未成工事支出金の額が、次期に繰り越された売上額の比率と合わないようになっていくからだ。ひどい場合は、繰り越し原価が売上高をも上回るようになり、大きな矛盾が出てくる。

 

[図表]粉飾決算を見つけるポイント

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中西 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

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