前回は、保険会社と被害者の間でまとまらない「物損補償」を巡る交渉について取り上げました。今回は、自賠責保険において後遺障害が補償される条件を見ていきます。

自賠責保険で14等級に振り分けられる「後遺障害」

前回までの記事では症状固定を早めることで治療費や休業損害、慰謝料を抑え、これらの保険金を最低補償の120万円以内にとどめようとする損害保険会社の実態に触れた。これはいわゆる治療までの話である。賠償上の治療とは症状固定までを指すということは前回までに触れたとおり。


もちろん問題はこれで終わったわけではなく、むしろこれからが損害賠償の本番だと考えてもらってもいい。それが後遺障害に対する損害賠償である。自賠責保険では後遺障害を重度のものから軽度のものまで14の等級に分け、それぞれに応じて補償をする仕組みになっている。今回からは、この後遺障害の認定が抱える問題点を指摘していこう。


そもそも後遺障害とはどのようなものを指しているのか、その補償の内容はどういうものかを見てみよう。

後遺障害とは「傷害が治った時に身体に存する障害」

自賠責保険における後遺障害とは「傷害が治った時に身体に存する障害をいう」(自賠法施行令2①二)。例えば交通事故によって手足の一部を失ってしまった場合、それ自体の治療が終わったとしても手足の一部を失ってしまったハンデは付きまとうことになる。そのような障害を後遺障害と呼ぶが、自賠責保険においては後遺障害が補償される条件として以下の4つが挙げられている。


① 自動車事故により被った傷害とその傷害が治った時に残存する後遺障害との間に 相当の因果関係があること。
② 将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的な毀損状態であるこ と。
③ 後遺障害の存在が医学的に認められること。
④ 労働能力の喪失を伴うこと。


つまり後遺症が事故による傷害によって引き起こされているという因果関係がはっきりとしていて(1)、その後遺症が精神的にも肉体的にも将来的に回復が困難であり(2)、医師もその障害の存在を認めていること(3)。そしてその障害によって健常時と比べて労働能力が落ちてしまっていること(4)が必要だというわけである。


このような条件を満たした場合には、自賠責保険では後遺障害と認められ、その障害の重さによって1級から14級に振り分けられ、それぞれに応じた補償がなされることになる。


さて、それぞれの等級に応じて損害が算出されるわけだが、その補償の内容は2つの柱からなっている。それがこれまでにも簡単に触れた逸失利益と慰謝料である。

本連載は、2015年12月22日刊行の書籍『ブラック・トライアングル[改訂版] 温存された大手損保、闇の構造』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ブラック・トライアングル[改訂版] 温存された大手損保、闇の構造

ブラック・トライアングル[改訂版] 温存された大手損保、闇の構造

谷 清司

幻冬舎メディアコンサルティング

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