本連載は、弁護士法人サン総合法律事務所代表・パートナーの清水俊順弁護士、パートナーの高村至弁護士による編書、『借地借家事件処理マニュアル』(新日本法規)より一部を抜粋し、賃貸借契約の解除・解約の進め方を、事例を交えて分かりやすく説明します。

悩ましい「賃料の滞納」・・・法律上の対処方法を確認

(1)賃料滞納の法的位置付けを確認する

 

賃貸借契約は、諾成・有償の双務契約で、継続的契約であるとの特徴を有しています(民601)。土地や建物などの不動産を対象とする賃貸借契約において、賃貸人は賃借人に対し不動産を使用・収益させる義務を負い、賃借人は不動産の使用の対価として賃貸人に対し賃料を支払う義務を負います。

 

賃料の支払は、賃借人にとって賃貸借契約の中核をなす義務です。賃料の滞納があれば、賃料支払義務の債務不履行となり、契約解除の原因となります(民541)。

「前払特約」が締結されているか?

(2)前払特約の有無を確認する

 

賃料の支払時期は、民法上、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に支払うとされています(民614)。

 

しかし、当事者の合意に基づき、支払時期を毎週、毎月、半年ごと、毎年というように民法614条の定めとは別に定めることもできるので、滞納状況を確認する前提として、賃貸借契約書をまず確認し、賃料の支払時期はいつとされているのか、また、支払われた賃料に対応しているのはどの期間なのか、などを把握する必要があります。

 

また、民法614条の定めでは、賃料は後払いとされています。しかし、不動産の賃貸借契約においては、賃料前払特約が締結されていることが多いと思われます(賃料を前月末払いとした場合、例えば7月分の賃料は前月に当たる6月末までに支払うことになります。)。

 

賃貸借契約書に支払時期が定められていない場合は、契約書外での合意がない限り民法614条の定めに従います。前払特約が締結されていない場合は、賃貸人から前払の請求はできませんので注意が必要です。

 

この話は次回に続きます。

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