前回は、「地震で倒壊しにくい物件」を見極めるポイントを取り上げました。今回は、違反建築物の売買のウラ事情を見ていきます。

違法建築物の購入となると銀行融資は下りないが・・・

見渡せばビルやマンション、戸建てと建物の種類はたくさんありますが、古い建物の一部は現行法に適合していない建築物なのです。といっても、違反建築物なわけでもありません。

 

このような建築物は既存不適格建築物といって、建設したときには適法だったものの、その後の法改正によって、改正後の規定に適合しない部分が出てきてしまったものです。また、違反建築物とは最初から法律に定められた規定に違反している建築物をいいます。たとえば面積制限オーバーや、高さを守っていない、決められた設備を設置していないなど、さまざまなパターンがあります。

 

私のお客様で、戸建て住宅を売りたいと相談に来られた方がいます。バブルのときに建てたものだからか贅沢なつくりになっていて、ジェットバスやシャンデリアなどの装飾品もさることながら、部屋数も多く6LDKの間取りでした。大型の車も入るほどの駐車場もあり、バブル時は1億円ほどの価格だったといいます。

 

この建物の売買希望価格は6000万円でしたが、割高なその価格でもすぐに物件を詳しく知りたい、内見したいとの申し込みがありました。そこで、内装の変更などにいくらかかるか、手直しをしなければならない場所はあるか、といったチェックのために建築業者も同伴で内見を行ったのです。

 

実際に見に行ってみると、広い庭に部屋を増築していたことがわかり、違法建築のため銀行からの融資が下りず、買い付けの話は流れてしまいました。融資が下りるようにするには、増築部分を取り壊し、元の状態に戻すしかありませんが、大規模な工事になってしまうということでした。

 

この物件は、違反建築物として納得のうえで現金で買ってくれるお客様を探すしかありません。物件が悪いわけではないのですが、要は売れるまでに時間がかかるということです。結局、このお客様は、至急現金が必要とのことで、希望売買価格の半分ほどでこの物件を売ってしまいました。

安く買って高額で貸す、または相応の額で買う客を待つ

不動産屋をやっていると、この類の話は意外と多く、もしお金があればいったん自社で安く買い上げて、高い家賃で貸したり、相応の金額で買ってくれるお客様をじっくり待つこともできます。この1戸の物件だけで、大きな利益を得ることも可能なのです。

 

ちなみに、違反建築物売買は法的には禁止されてはいませんが、重要事項説明といって買主にきちんと違反していることを説明しなければなりません。

 

めったにないケースではありますが、近隣からのクレームの内容によっては、行政から是正措置が命じられる可能性もあります。

 

住宅ローンの審査基準も違反建築物は融資対象外ですので、そこに不動産屋の儲けのヒントがあるというわけです。やはり不動産屋は「お金持ちになれるチャンスが身近にある仕事」だと、このときも改めて感じたものでした。

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    本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『誰も知らない不動産屋のウラ話』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    誰も知らない不動産屋のウラ話

    誰も知らない不動産屋のウラ話

    川嶋 謙一

    幻冬舎メディアコンサルティング

    “ディープタウン新宿"の不動産会社社長が業界のアブナイ裏話を一挙公開! 「学歴ナシ」「若さナシ」「経験ナシ」「金ナシ」でも儲かる仕組み、意外な慣習とは── 2回の自己破産を経験し、ありとあらゆる職業を渡り歩いて…

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