今回は、需要と供給で通貨の価値が決まる「変動相場制」の仕組みを解説します。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

外国為替市場は24時間眠らない

変動相場制とは、各国の通貨価値を外国為替市場の需要と供給にまかせてしまう制度です。市場の参加者は、銀行、商社、輸出入メーカー、生命保険会社などで、これらのうち取引額が一番大きいのは銀行間の取引です。為替ブローカーと呼ばれる業者が注文の仲介をします。取引は、すべて電話やインターネットで行なわれます。

 

為替レートはそのときどきの需要と供給によって刻一刻変化し、貿易額の100倍にものぼる膨大な金額の各国の通貨が交換されています。外国為替市場は24時間眠ることはなく、世界のどこかのマーケットが常に開いています。

 

[図表1]外国為替の仲介をするブローカー

(トウキョウフォレックス上田ハーロー株式会社)
(トウキョウフォレックス上田ハーロー株式会社)

「為替レート」に影響を与える要素とは?

為替レートを決めるのは、各国通貨に対する需要と供給です。たとえば、私たちが海外旅行に出かける際にはアメリカドルを準備します。銀行に行って、その日の為替レート(+手数料)でドルを買います。これは、ドルに対する需要(=円の供給)を意味します。反対に、旅行から帰ってきて余ったドルを銀行に売ることもできます。これはドルに対する供給(=円の需要)となります。1ドルがいくらの円で交換されるかという為替レートは、このようなドルや円に対する需要と供給によって決定されます。

 

一般的に、為替レートに影響を与えるのは次の(1)から(4)のような要因です。これらはまとめてファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)と呼ばれます。

 

(1)経常収支の動向

経常収支が黒字になると、為替レートは円高になります。いまトヨタ自動車がアメリカに自動車を輸出したとします。輸出代金がアメリカからドルで支払われます(図表2)。しかし、日本国内でドルは使えません。

 

[図表2]日本からの輸出が増加すれば円高になる

 

そこで外国為替市場でドルを売りに出し、円を購入します。その結果、円高になります。一般に、日本からの輸出が増えれば、円高・ドル安が進みます。反対に日本の輸入が増えれば、円安・ドル高が進みます。より一般的には「ドルが日本国内に入ってくると円高になる」と覚えておくと便利です。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

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