今回は、外国との経済取引の結果がわかる、 「国際収支」の見方を解説します。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

国際収支を構成する「3つの大項目」

国際収支とは、1年間の国際取引の受け取りと支払いの勘定の記録です。これには商品の輸出入、海外への投資、海外からの送金などの経済取引が記録され、国際収支を見ると一国が外国とのどんな経済取引で黒字や赤字になっているのかがわかります。国際収支表の大項目は「経常収支」、「資本移転等収支」、「金融収支」の三つで構成されます(図表1)。

 

[図表1]国際収支表

( )内のデータは2015年(誤差脱漏 約5兆円あり)
( )内のデータは2015年(誤差脱漏 約5兆円あり)

 

経常収支は一国の対外的な収入と支出の差額をあらわし、貿易・サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支の合計からなります。

 

貿易収支はモノの輸出入の収支です。サービス収支は海外旅行のように、モノのやり取りをともなわない取引の収支をいいます。サービス収支には海外旅行のほか、運輸、保険、金融、通信、文化的活動、特許権使用料などが含まれます。近年、サービス取引は次第に増加し、貿易収支の約3割の規模に膨らんでいます。

 

[図表2]サービス収支の例

 

金融収支は、日本企業が外国で工場を建てるなどの直接投資を行なったり、外国の証券を買うなどの証券投資を行なったりした場合に発生する収支をあらわします。金融収支は海外資産が増加した場合、プラスに表示されます。

 

第一次所得収支はこうした海外金融資産から得られる利子・配当などの収支をいいます。また、第二次所得収支は対価をともなわない無償の収支で、具体的には国際機関への拠出や食料の無償援助などです。資本移転等収支も第二次所得収支と同じく対価をともなわない資金移動ですが、援助が消費財の場合は第二次所得収支に分類され、ダムや道路建設など資本財の場合は資本移転等収支に分類されることになっています。

重要なのは「貿易収支・金融収支・第一次所得収支」

ナントカ収支というのがいっぱい出てきました。こういうときは、まず一番大切なものをしっかり覚えることをお勧めします。この場合大切なのは、貿易収支、金融収支、第一次所得収支の三つです。この三つさえ理解しておけば、ニュースを見ていて困ることはまずありません。

 

[図表3]貿易収支、金融収支、第一次所得収支のイメージ

 

問題:次の取引内容は、国際収支表のどの項目に分類されるでしょうか。


●1 サンフランシスコへ海外旅行に行き、ホテルに宿泊費を払った。
●2 トヨタ自動車が、ヨーロッパに工場を建てた。
●3 トヨタのヨーロッパ工場で得た収益を、日本に送金した。
●4 日本に出稼ぎに来ている外国人労働者が、自分の国の家族に送金した。
●5 日本の生命保険会社がアメリカの国債を購入した。

 

問題の正解:


●1 サービス収支(マイナス)、●2 金融収支(プラス)、●3 第一次所得収支(プラス)、●4 第二次所得収支(マイナス)、●5 金融収支(プラス)

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

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南 英世

ベレ出版

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