今回は、関税引き下げ、自由貿易を推進した「GATT」の概要を見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

第二次世界大戦後に設立された「GATT(ガット)」

人類は失敗を重ねることで少しずつ賢くなります。世界恐慌をきっかけに、列強は不況を乗り切るためブロック経済を展開しました。自国の植民地を囲い込み、他国の製品に高い関税を課して締め出す政策をとったのです。そのことが「持てる国」と「持たざる国」の対立を激化させ、第二次世界大戦の一因となりました。

 

その反省から、第二次世界大戦後、GATT関税および貿易に関する一般協定)が設立されました。GATTは自由・無差別・多角主義と呼ばれる「ガット三原則」の下で多角的貿易交渉ラウンド交渉)を行ない、関税の引き下げと自由貿易の推進に努めてきました。

 

[図表1]ガット三原則

関税の大幅引き下げを実現後、WTOへと引き継がれる

GATTは、ケネディ・ラウンド(1967年)、東京ラウンド(1979年)、ウルグアイ・ラウンド(1994年)などの交渉を通じて、関税の大幅引き下げを実現しました。その後GATTは1995年にWTO世界貿易機関)に引き継がれました(図表2)。

 

[図表2]世界の平均輸入関税率の推移

(京都産業大学大川良文氏講義資料より)
(京都産業大学大川良文氏講義資料より)

 

現在、自由貿易の推進はWTOが中心となって行なっています。WTOは、本部をスイスに置く常設機関であること、対象品目をサービス貿易にまで拡大したこと、知的財産権の保護規定を設けたこと、紛争処理制度(裁判機能)を持ったことなどの点で、以前のGATTよりはるかに強力な国際機関となっています。

 

とくに紛争処理能力については、これまでと違って、訴えられた国の同意の有無にかかわらず、また「訴訟を行なうことに全会一致で反対」しない限り、ほぼ自動的に訴訟に持ち込めるようになりました。これは国内の民事訴訟と共通する方式で、ネガティブ・コンセンサス方式と呼ばれます。

 

現在、ドーハ・ラウンドが行なわれております。しかし、自由化を進めようとするWTOに対して、自由貿易政策は発展途上国に不利に作用するとして、発展途上国を中心に貿易自由化に反対する運動も見られます。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

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