今回は、ソ連が抱えていた問題をもとに「社会主義の矛盾」を解説します。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

消費者ニーズと生産計画の不一致を生んだ「計画経済」

前回の続きです。

 

(原因3)ニーズの多様化に対応できなかった計画経済

 

ソ連がまだ貧しかった頃は、飢え死にしない程度の食料と、凍え死なない程度の衣類があれば、それで十分でした。みんな同じものを着ていても誰も文句をいいませんでした。しかし、生活が飢餓水準を脱して豊かになると、人々は自分の好みに合った良質の商品を求めるようになります。

 

たとえば帽子の生産をする場合、どんな大きさで、どんな色のものを、どんなデザインで、価格はいくらで、どれだけ供給したらよいかを決めなければなりません。資本主義であれば消費者の好みは「市場」を通して瞬時に生産者に伝えられます。しかし市場がない社会主義では、政府が想像をたくましくして生産計画を立てなければなりません。かつてソ連には公定価格だけでも270万種類あるといわれました。

 

しかし、豊かになればなるほど人々のニーズは多様化し、計画経済では対応できなくなるのは当然です。こうした消費者ニーズと生産計画の不一致が、社会主義崩壊の一因となりました。

ソ連の財政を圧迫した軍事費、国力は衰退

(原因4)膨大な軍事費

 

一方、膨大な軍事費負担という問題も見逃せません。いかなる国も、軍事費というムダ使いを長期に支出し続ければ、やがては国力が衰退していきます。これはほとんど歴史的な法則です。

 

1980年代にアメリカのレーガン大統領は「強いアメリカ」というキャッチフレーズを掲げて軍事力の強化に乗り出しました。これに対抗してソ連も軍事費を拡大します。しかし、軍事費の拡大はソ連の財政を圧迫しました。軍事費を支えるのは経済力です。結局、経済力が劣っていたソ連はこの負担に耐え切れず、崩壊を早めてしまいました。米ソの軍事拡大競争が冷戦を終結させる一因となったというのですから、歴史は皮肉なものです。

 

資本主義の欠点を取り除き、人々をhappyにするための切札として登場しながら、社会主義もまた別の「矛盾」を生み出してしまいました。社会主義思想とは北極星と同じように人類の目指すべき方向を示しますが、永遠にたどり着くことができない制度だったのかもしれません。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

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