本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年夏号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、トランプ大統領の政策と、それによる世界マーケットへの影響を読み解きます(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

財政政策の成果に対して強まっていた市場の警戒感

2017年3月24日、トランプ政権が成立を目指していたオバマケア代替法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」が撤回された。

 

こうした医療保険制度改革は公約の目玉ともされていたほか、減税策の財源としても位置づけられていたことから、トランプ大統領の議会運営能力に対する懸念が台頭する状況になっている。

 

この瞬間から、市場での関心が高いトランプ大統領の財政政策に関しても、期待通りの成果が上げられないのではといった警戒感が強まることとなった。

オバマケア新法案が下院通過 トランプ政策の動きは?

ただ、5月5日には新しい代替法案が下院で可決された。このまま上院で可決される可能性は低いと見られているが、少なくても最初の代替法案が廃案となって間もないだけに、反対派を取り込み、保守派・穏健派も受け入れ可能な新法案を短時間でまとめられたことにはサプライズも強まることとなった。

 

また、4月26日には税制改革案を公表している。個人の連邦所得税については、最高税率を現行の39.6%から35%に引き下げ、税率構造を現行の7段階から10%、25%、35%の3段階にして簡素化するとともに、基礎控除を2倍にするとしている。

 

また、連邦法人税については、世界で最も高いとされる現行の35%から、世界で最も低いとされる15%に引き下げるとしている。一方、共和党が主張する法人税の国境調整は盛り込まれなかった。

 

なお、税制改革案の詳細は5月中にも公表される予定の予算教書に盛り込まれるとみられている。

 

減税法案の成立は早くても9月中旬頃とみられており、それまでには議会との折衝など紆余曲折があろうが、少なくても一時期の政策迷走状態からは脱却しており、今後は政策期待が回復していく余地はあろう。

 

とりわけ、減税策はトランプ政権の「生命線」ともいえる政策であるほか、もともと共和党が積極的な減税政策を打ってきた経緯もある。短期的な赤字拡大を容認する方向性が示された点などもポジティブと捉えられる。

FISCO 株・企業報 2017年夏号 今、この株を買おう

FISCO 株・企業報 2017年夏号 今、この株を買おう

株式会社フィスコ

実業之日本社

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