米国不動産の透明性を高める「エスクロー」という仕組み

世界最高水準の透明性を誇る米国不動産の取引。今回は、売り手と買い手の間に第三者が入り、取引の安全性を担保する「エスクロー」という仕組みについて見ていきます。

売り手と買い手の間に入り取引の安全性を担保

筆者は20年ほど、米国不動産の仲介業務を行っていますが、この間、不動産取引に絡んだ詐欺事件というのは、一度も聞いたことがありません。これは、取引の仕組みが非常に透明性の高いものになっているからですが(図表1)、そのなかで、エスクローという仕組みが持つ効果が大きいと思います。

 

エスクローというのは、不動産に限ったものではないのですが、要は商取引を行う際に、売り手と買い手の間に第三者(通常はエスクロー会社)が入って、取引の安全性を担保するものです。簡単にいうと、次のような手順になります。

 

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(1)買い手がエスクローに購入代金を預ける
(2)売り手はエスクローへの入金を確認した後、買い手に商品を発送する
(3)買い手は送られてきた商品を確認した後、エスクローに商品が到着したことを連絡する
(4)エスクローが商品の売り手に代金を送金する
(5)売り手が代金を受け取る

 

これがエスクローの簡単な仕組みです。この仕組みを用いることによって、商品の売り手が商品を送らずに代金のみを受け取って行方をくらますということが、できなくなります。米国不動産の取引には、このエスクローの仕組みがあるため、これまで不動産取引に関連した詐欺事件が、少なくとも筆者の周りにはなかったのです。

エスクローを通した不動産取引の具体的な流れ

もちろん、エスクローを通さなくても、不動産取引を行うことはできます。つまり、売り手と買い手の間で直接取引をし、双方で物件と現金の受け渡しを行うことも可能ですが、エスクローやタイトル保険を利用しないと不動産に対する保証がないので、売り手と買い手の双方にとってさまざまなトラブルが発生する危険があります。

 

エスクローに支払う手数料は、売値にもよりますが日本円で20万円程度ですから、数千万円の取引であることを考えると、大したコスト負担にはなりません。そのため、米国では基本的にエスクローを介在させない不動産取引はないと考えてよいでしょう。米国不動産投資において、どのようにエスクローが介在してくるのかということを、実際の取引の流れに沿って説明してみましょう。

 

Aさんが「プール付きで50万ドルの家を探している」とA不動産に話をしたとしましょう。

 

そこでA不動産はMLSのサイトに入って、希望物件があるかどうかを探します。さらにZillowなどの一般サイトも参照しつつ、実際に20軒くらいを見に行き、これならAさんに自信を持っておすすめできるという50万ドル前後の物件をピックアップします。そしてAさんにその情報を渡し、Aさんが納得したら、正式にオファーを出します。

 

オファーとは、ある値段で売り手に申し込むことです。実際に物件を見て50万ドルの価値があると判断すれば50万ドルで入札しますが、値下げの余地があると判断した場合は、たとえば45万ドルでオファーを出し、様子を見ます。

 

基本的に、こうした不動産の価格交渉などは、買い手と売り手双方が別の不動産業者をエージェントとして立てて行われます。売り手と買い手が直接、顔を合わせて交渉することはありません。

 

Aさんの代理人であるA不動産は、売り手であるBさんの代理人であるB不動産に、45万ドルでどうかというオファーを出しました。すると今度はB不動産が、売り手であるBさんに「45万ドルでオファーが来ているがどうするか」と確認します。ここで、Bさんが45万ドルでもよいということになれば、その時点で取引は成立に向けて動き始めます。

 

しかし、「やはり50万ドルで売りたい」といってくるかもしれません。そうなった時には、A不動産とB不動産の間で駆け引きが行われます。とはいえ、ここのやりとりは、それほど何回も行われるものではありません。お互いに腹の探り合いを何回も行うのは非効率だからです。したがって、双方にとって妥協できるラインというものをお互いに出して、そこに近い水準で決めます。たとえば47万ドルでお互いが納得するかもしれません。

 

もし、47万ドルで双方、納得がいけば、売り手と買い手の間で合意された条件を書類にして、エスクローに持っていきます。この時点でエスクローがオープンされるわけです。エスクローがオープンしたら、オファーの際に用意しておいた手付金(購入価格の3%前後)をエスクロー口座に入れます。

日本人の住宅ローンならエクスロー開設期間は60日程度

エスクローがオープンされて、クローズされるまでの期間は通常、30~35日程度。長くかかったとしても、せいぜい60日程度でしょう。受け渡しがキャッシュで行われるなら、すぐにクローズまでもっていくこともできますが、不動産の場合、相応に高額な商取引になるので、大半の人は住宅ローンを組みます。その手続きには時間がかかります。

 

日本の方が住宅ローンを組んで米国不動産を購入するという場合は、外国人なので住宅ローンの認可が下りるのにも時間がかかります。この場合、エスクローの開設期間は60日程度を見ておいたほうがよいでしょう。

 

エスクローがオープンした後、売り手はターマイト(シロアリ)・レポートおよび、ディスクロージャー・ステートメントを用意します。ターマイト・レポートとは、シロアリに食われていないかどうかをレポートにして、それを買い手に知らせるためのものです。売り手は、買い手がローンを組む場合にこうした情報を伝える義務があります。キャッシュの場合は提出の義務はありません。

 

また、ディスクロージャー・ステートメントとは、物件の状態が書かれているもので、物件に関する情報を開示するものです。一方で買い手は、インスペクション・レポートを作成します。インスペクション・レポートとは、専門家による物件のコンディション(構造や設備などの状態)の調査のことです。

 

この後、最終的な価格交渉が行われます。47万ドルという価格が決まっていても、インスペクション・レポートを見たら床や屋根、電気系統などに何か問題があり、その補修にコストがかかるということであれば、まだ価格の引き下げ余地が生じてくるのです。場合によっては45万ドルまで下げられるかもしれません。いずれにしても、ここで1回交渉を行い、お互いに納得のいく金額になったら、後は買い手が住宅ローンの手続きを進めます。

 

これですべての契約手続きは終わりです。そして、エスクローのクローズ前に、手付金以外の残りの代金がエスクローを通じて支払われ、売り手であるBさんからAさんのもとに家の鍵が渡ったら、この時点でエスクローはクローズされ、すべての取引は一件落着となります。

サブプライムショック以降、審査が厳しい住宅ローン

最後に、日本人が米国における住宅ローンを組む場合について、簡単に触れておきましょう。手元にお金が余っていて、キャッシュで不動産を購入できるという恵まれた経済環境にある人は別として、大概の米国人は住宅ローンを組んで米国不動産を購入します。

 

現状、サブプライムショック以降は、住宅ローンの審査自体が厳しくなっており、ローンプログラムの種類も減少してきています。米国の居住者に対してさえ、そういう状況ですから、非居住者である日本人が購入するとなると、さらに厳しくなるのは仕方がないでしょう。

 

ちなみに筆者が代表を務めるリーバンズコーポレーションでは、外国人専門のローンを扱っている4つの銀行とお付き合いがあります。ただ、それでも絶対に住宅ローンの審査が通るという保証はありません。一般的には、50万ドルくらいの物件を購入する場合なら、その40%相当を頭金として入れられ、必要書類をすべて提出し、銀行が要求する条件をすべて満たすことができれば審査は通ります。

 

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なお、米国の住宅ローンは固定金利が基本で、通常30年のローンまで組むことができますが、米国不動産投資を行う人のなかには減価償却によるタックスメリットを取りにいくのが目的という人もいます。その場合は、減価償却できる期間が木造だと最短で4年なので、5年の固定金利住宅ローンを組むというのが、最もスタンダードな方法です。

 

次回は、世界最強通貨と呼ばれる「米ドル」を持つことの意味について考えていきましょう。

本連載は、2014年10月3日刊行の書籍『本命 米国不動産投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
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ニック 市丸

リーバンズコーポレーション 会長

1953年生まれ。米国在住35年。カリフォルニア州を拠点に保険・証券・不動産・ファイナンシャルアドバイザーとしてキャリアを積み、2002年、ロサンゼルス郊外のトーランスにリーバンズコーポレーションを設立。豊富な不動産の販売・仲介・管理実績を持ち、米国居住者以外の信託活用法など、不動産保有にかかる関連アドバイスにも強みがある。

著者紹介

連載米国不動産投資が「本命」といえる理由

本命 米国不動産投資

本命 米国不動産投資

ニック 市丸

幻冬舎メディアコンサルティング

成熟経済であり、人口も減少フェーズに入った日本では、国内市場のパイは縮小を続け、不動産マーケットの未来も決して明るくはない。さらに1000兆円を超える財政赤字、超高齢化社会における社会保障費の増大、特に富裕層をター…

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